絵本を読む子はなぜ語彙が増えるの?子どもの言葉が育つ読み聞かせ

「絵本をたくさん読むと、語彙が増える」
そんな話を聞いたことはありませんか?
子どもの言葉を豊かにするために、読み聞かせをしているご家庭も多いと思います。
では、なぜ絵本を読むことで語彙が増えるのでしょうか?
今回は、絵本を読むとなぜ子どもの語彙が増えていくのか、そして言葉を育てるために大人ができる関わり方について、わかりやすく解説していきます。
最後まで読んでいただけると幸いです。
「語彙が増える」ってどういうこと?
語彙が増えるというと、「たくさんの言葉を知っていること」をイメージするかもしれません。
もちろん、それも語彙のひとつです。
でも、子どもの言葉が豊かになるというのは、知っている単語の数が増えることだけではありません。
たとえば、雨の日。
「雨が降っている」だけでなく、
- 「ぽつぽつ降ってきた」
- 「ザーザー降ってる!」
- 「雨がしとしと降ってるね」
と表現できたら、同じ「雨」でも伝えられることが増えていきます。
気持ちも同じです。
「いや」だけだった子が、
- 「悲しかった」
- 「悔しかった」
- 「寂しかった」
- 「本当は一緒に遊びたかった」
と、自分の気持ちを少しずつ言葉にできるようになる。
つまり、語彙が増えるということは、
- 自分が見たもの
- 感じたこと
- 考えたこと
を誰かに表現するための「言葉の選択肢」が増えていくことでもあるのです。
絵本を読む子の語彙が増えやすい6つの理由
絵本を読む子の語彙が増えやすい理由は6つあります。
- 日常生活では使わない言葉に出会える
- 「言葉」と「絵」を一緒に理解できる
- 物語の中で言葉の「使い方」を知ることができる
- 同じ言葉に何度も出会える
- 子どもとの会話によって言葉が広がる
- 絵本の言葉が日常生活につながっていく
1.日常生活では使わない言葉に出会える
家庭での会話には、よく使う言葉があります。
「ご飯食べよう」
「お風呂入ろう」
「靴履いて」
「今日は寒いね」
もちろん、こうした日常会話も子どもの言葉を育てる大切な経験です。
一方、絵本には普段の生活ではあまり使わない言葉にも出会えます。
たとえば、
- 「そよそよと風が吹く」
- 「雨がしとしと降る」
- 「夕日が沈む」
- 「胸がどきどきする」
- 「悔しくて涙がこぼれる」
などです。
物語によって、動物、植物、宇宙、乗り物、感情、季節など、出会う言葉の種類も広がります。
毎日の生活だけでは出会えなかった言葉と出会える。
これが、絵本の大きな魅力です。
2.「言葉」と「絵」を一緒に理解できる
例えば、小さな子どもに、「ぞう」という言葉を聞かせたとしましょう。
小さな子どもに「ぞう」という言葉だけを聞かせても、初めて聞いた子には何のことか分かりません。
でも絵本なら、「大きなぞうが歩いてきました」という言葉を聞きながら、ぞうの絵を見ることができます。
すると、「この大きな動物が『ぞう』なんだ」と、言葉と対象を結びつけやすくなります。
これは物の名前だけではありません。
たとえば、「悲しい」という言葉が出てきたとき、
登場人物が
- 涙を流している
- うつむいている
そんな絵を見て、「悲しいって、こんな気持ちなのかな」と考えることができます。
絵本では、言葉+絵+出来事を一緒に経験できます。
そのため、単に言葉の音を聞くだけではなく、言葉の意味をイメージしながら理解しやすいのです。
3.物語の中で言葉の「使い方」を知ることができる
言葉は、意味を知っているだけでは、なかなか使えるようになりません。
どんな場面で使うのかを知ることも大切です。
たとえば「悔しい」という言葉。
「悔しいとは、自分の思い通りにならなくて残念に思うことです」と説明されるより、
一生懸命練習したのに負けてしまった主人公が涙を流して、「くやしいな」と言っていたらどうでしょう。
子どもは物語を見ながら、「こういう気持ちを“悔しい”っていうのかな」と具体的に感じることができます。
そして、いつか自分が同じような経験をしたとき、「悔しかった」という言葉につながるかもしれません。
絵本は、言葉そのものだけではなく、「どんなときに使う言葉なのか」まで物語の中で見せてくれるのです。
4.同じ言葉に何度も出会える
一度聞いただけの言葉を、すぐに自分で使えるようになるとは限りません。
何度も聞いたり、いろいろな場面で出会ったりしながら、少しずつ意味を理解していきます。
子どもは、お気に入りの絵本を何度も、「読んで!」と持ってくることがあります。
大人としては、「またこの絵本?」とと思うかもしれません。
でも、同じ絵本を繰り返し読むことにも意味があります。
最初は聞いていただけだった言葉が、二回、三回、四回……同じ物語の中で繰り返し聞くことで、
「聞いたことがある」
⬇
「なんとなく意味が分かる」
⬇
「意味が分かる」
⬇
「自分でも使ってみる」
と、少しずつ馴染みのある言葉になっていきます。
そのうち、大人が読む前に、「次は○○って言うんだよ!」と子どもが先に言うこともあります。
これは、ただ文章を暗記しているだけとは限りません。好きな言葉や場面を楽しみながら、物語と言葉が結びついているのです。
新しい絵本を次々に読むことだけが、言葉を増やす方法ではありません。
「また同じ絵本」も、子どもにとって大切な時間です。
5.子どもとの会話によって言葉が広がる
読み聞かせは、大人が文章を読んで、子どもが黙って聞く時間でなくても構いません。
たとえば、子どもが絵を指さして、「わんわん!」と言ったとします。
そこで、
- 「本当だ。白いわんわんだね」
- 「走ってるね」
と返してあげる。
すると、「わんわん」という一つの言葉から、
- 「白い」
- 「走る」
という別の言葉へ世界が広がります。
子どもが、「この子泣いてる」と言ったら、
「本当だね。悲しかったのかな」
と返す。
そこから「悲しい」という気持ちの言葉に出会います。
このように、子どもの言葉を大人が少しだけ広げて返してあげることで、会話の中から新しい言葉との出会いが生まれます。
6.絵本の言葉が日常生活につながっていく
絵本で出会った言葉は、絵本の中だけで終わるとは限りません。
たとえば絵本で「どんぐり」という言葉を知った子が、散歩中にどんぐりを見つけたとします。
「あ!絵本にあった!」と気づくかもしれません。そのとき、「本当だ。絵本に出てきたどんぐりだね」と大人が応えてあげる。
すると、絵本で知った言葉と、本物の経験がつながります。
また、たとえば、
「ひらひら」という言葉を知ったあとに落ち葉を見て、「葉っぱがひらひらしてるね」と話す。
雨の日には、「絵本みたいに、ぽつぽつ降ってきたね」と言ってみる。
絵本で出会った言葉を実際の生活の中でも使うことで、言葉は少しずつ子どもの身近なものになっていきます。
語彙を育てる読み聞かせの5つの関わり方
子どもの語彙を育てる読み聞かせの関わり方を5つご紹介します。
- 分からない言葉を全部説明しなくていい
- 子どもの言葉を少しだけ広げて返す
- 子どもの「これ何?」を大切にする
- 同じ絵本を何度読んでもいい
- 絵本で出会った言葉を日常でも使ってみる
1.分からない言葉を全部説明しなくていい
絵本を読んでいると、「この言葉、子どもには難しいかな?」と思うことがあります。
でも、すべての言葉をその場で説明する必要はありません。前後の物語や絵から、なんとなく意味を感じ取れることもあります。
子どもが、「○○ってなに?」と聞いてきたら、そのときに分かりやすく伝えてあげれば大丈夫です。
読み聞かせを「言葉の授業」にしすぎず、まずは物語を楽しみましょう。
2.子どもの言葉を少しだけ広げて返す
子どもが、「鳥!」と言ったら、
- 「青い鳥さんだね」
- 「飛んでるね」
と少しだけ言葉を加えてみます。
「雨!」なら、「雨がザーザー降ってるね」でもいいでしょう。
子どもの発言を訂正するのではなく、子どもが出した言葉に少しだけ新しい言葉を添えるイメージです。
無理に復唱させる必要もありません。
大人との自然なやり取りの中で、さまざまな言葉を聞かせてあげましょう。
3.子どもの「これ何?」を大切にする
絵本を読んでいる途中で、「これ何?」「どうして?」と何度も聞かれることがあります。
忙しいと、「あとでね」と言いたくなることもあるでしょう。もちろん、すべてに丁寧に答えられない日があっても大丈夫です。
でも余裕があるときは、
- 「なんだと思う?」
- 「これは○○だよ」
と一緒に見てみてください。
「知りたい」と思った瞬間は、新しい言葉と出会う絶好の機会です。
4.同じ絵本を何度読んでもいい
「いろいろな言葉を覚えてほしいから、たくさん違う絵本を読まなければ」と思う必要はありません。
子どもがお気に入りの一冊を何度も持ってきたら、「この絵本が好きなんだね」と一緒に楽しみましょう。
- 昨日とは違う絵を見つける
- 前回は気づかなかった言葉に気づく
- 覚えた文章を一緒に言う
同じ絵本でも、子どもの楽しみ方は少しずつ変わっていきます。
5.絵本で出会った言葉を日常でも使ってみる
読み聞かせが終わったあとも、絵本の言葉を生活の中で使ってみましょう。
散歩中に、「葉っぱがひらひら落ちてきたね」
お風呂で、「泡がふわふわだね」
雨の日に、「今日はしとしと雨だね」
と話してみる。
「これは絵本で覚えた言葉だよ」と教える必要はありません。自然な会話の中で使うだけで十分です。
絵本の世界と現実の世界を行ったり来たりすることで、言葉は生活の中へ広がっていきます。
「たくさん読まなきゃ」と思わなくても大丈夫
「絵本を読むと語彙が増える」と聞くと、
- 「毎日10冊読まないと」
- 「たくさん絵本を買わないと」
と思ってしまう方もいるかもしれません。
でも、読み聞かせを「親が頑張らなければならないこと」にしてほしくありません。
一日に何冊読んだかを競う必要はありません。
一冊でもいい。
数ページでもいい。
昨日と同じ絵本でもいい。
大切なのは冊数よりも、
- 「これ、かわいいね」
- 「この子、どうしたのかな」
- 「○○ちゃんも見たことあるね」
と、絵本を通して子どもと言葉を交わすことです。
読み聞かせは、子どもの語彙を増やすためのトレーニングではありません。
まずは、一緒に絵本を楽しんでください。
言葉は、その楽しい経験の中から少しずつ育っていきます。
「言葉を育てる」ということ
子どもと会話をして過ごしていると、
- 「そんな言葉、知っていたんだ」
- 「こんなふうに気持ちを伝えられるようになったんだ」
と子どもの言葉に驚かされる瞬間があります。
昨日まで「イヤ!」と言っていた子が、「まだ使いたかった」と言えるようになる。
泣いていた子が、「悲しかった」と言えるようになる。
友だちに、「一緒に遊ぼう」と言えるようになる。
子どもにとって言葉は、知識だけではありません。人とつながるためのものです。
- 「貸して」
- 「ありがとう」
- 「やめて」
- 「悲しかった」
- 「一緒に遊びたい」
- 「大好き」
知っている言葉が増えるほど、自分の気持ちや考えを伝える方法も増えていきます。
だから、子どもの語彙を育てるということは、単に「言葉をたくさん覚えさせること」ではありません。
子どもが自分の世界を表現するための言葉を、一つずつ増やしていくこと。
絵本は、そのためのたくさんの言葉と出会わせてくれる存在なのです。
まとめ
絵本を読むことで語彙が増えやすい理由は、単にたくさんの単語を聞くからではありません。
- 絵を見ながら言葉を聞く。
- 物語の中で言葉の意味に触れる。
- 同じ絵本を何度も楽しむ。
- 大好きな人と絵本について話す。
- 絵本で出会った言葉を日常生活の中でも使ってみる。
と言う経験ができます。
だから、
「たくさん読まなくちゃ」
「知らない言葉を説明しなくちゃ」
「読んだあとに覚えているか確認したほうがいいのかな」
と絵本を「言葉を覚えさせる教材」として見せるより、子どもと一緒に絵本を楽しみましょう。
- 一冊の絵本を何度も読んでもいい。
- 途中でおしゃべりしてもいい。
- 同じページからなかなか進まなくてもいい。
- 子どもが、「これなあに?」と聞いたら、一緒に考える。
- 「わんわん!」と言ったら、「白いわんわんだね」と少しだけ言葉を添える。
そんな小さな会話の積み重ねが、子どもの言葉の世界を少しずつ広げていきます。
そして、増えていく言葉は、いつか子どもが、
「うれしい」
「悲しい」
「やめてほしい」
「一緒に遊びたい」
「大好き」
と、自分の気持ちを誰かに伝えるための言葉にもなっていきます。
絵本は、まだ知らない言葉と出会い、自分の気持ちを伝える言葉を少しずつ見つけていく場所。
今日の一冊から出会った小さな言葉が、いつかその子が誰かと心を通わせるための、大切な言葉になるかもしれません。
yumenoの活動について
yumenoは、ユメノの名で絵本を制作しています。
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🌿ことのはうさぎの ひとこと🌿
「言葉が増えると、伝えられる気持ちも増えていく。たくさんの言葉に出会うたび、心の世界は少しずつ広がっていくんだよ。」
yumeno
元保育士/ブロガー/絵本作家
短大(保育科)を卒業後、保育園や院内保育所、夜間託児所を経験。さまざまな保育現場で子どもたちの心に寄り添いながら関わってきました。
現在は保育士としての経験をもとに、オリジナル絵本を制作しています。このブログでは、絵本をより深く楽しんでいただけるよう、絵本のテーマを保育の視点からわかりやすく解説したブログを発信しています。
このブログが、子どもはもちろん、大人にとっても心を見つめ直すきっかけとなり、穏やかで心温かな繋がりが広がっていくよう願っています。
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ユメノのオリジナル絵本は、「ことのはうさぎのものがたり」シリーズの他にドラゴンシリーズもあります。
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