「急に泣き叫び始めた。」
「思い通りにならないと物を投げる。」
「一度怒ると、なかなか落ち着かない。」
子育てをしていると、このような「かんしゃく」に悩むことは少なくありません。
「どうしてこんなに怒るの?」
「育て方が悪いのかな…」
と不安になる親も多いでしょう。
しかし、かんしゃくの多くは性格やしつけの問題ではなく、子どもの脳が発達の途中にあることが大きく関係しています。
この記事では、
- 子どもがかんしゃくを起こす理由
- 脳の中で起きていること
- 年齢ごとの特徴
- 今日からできる対応方法
について、脳科学の視点からわかりやすく解説します。
ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
かんしゃくは「困った行動」ではなく「発達のサイン」
子どもが大泣きしたり、怒って暴れたりすると、
- 「わがまま」
- 「甘えている」
と思われることがあります。しかし実際には、かんしゃくは子どもが感情をうまく処理できないために起こる自然な反応です。
大人は、
- 「今は我慢しよう」
- 「落ち着いて考えよう」
と自分の感情を調整できます。しかし幼い子どもは、その力がまだ十分に育っていません。
つまり、かんしゃくは「困らせようとしている」のではなく、「感情があふれてしまった状態」なのです。
子どもの脳では何が起きているの?
① 扁桃体が強く反応している
脳には「扁桃体(へんとうたい)」という感情を感じる場所があります。
扁桃体は、
- 怖い
- 悔しい
- 不安
- イライラ
などを感じると、瞬時に反応します。子どもの扁桃体はとても敏感です。
そのため、
- おもちゃを取られた
- 思い通りにならなかった
- 注意された
- 疲れていた
といった小さな出来事でも、大きなストレスとして受け止めます。
その結果、怒りや泣くという反応につながるのです。
② 前頭葉がまだ未熟
感情を落ち着かせる役割を持つのが「前頭葉」です。
前頭葉は、
- 我慢する
- 順番を待つ
- 気持ちを切り替える
- 相手の立場を考える
などを担当しています。
しかし、この前頭前野は幼児期ではまだ発達の途中です。
そのため、「怒らないようにしよう」と思っても、脳のブレーキが十分に働きません。大人なら我慢できることでも、子どもにはとても難しいことなのです。
実は「怒り」の前に別の感情がある
怒りは「二次感情」と呼ばれます。
その奥には、
- 悲しい
- 寂しい
- 悔しい
- 不安
- 恥ずかしい
- 疲れた
などの「一次感情」が隠れています。
例えば、
アイスを買ってもらえず泣いている子どもは、「アイスが欲しい」だけではなく、
- 「期待していたのに悲しかった」
- 「楽しみにしていたのに残念だった」
という気持ちを抱えていることがあります。怒りだけを見るのではなく、その奥にある気持ちに目を向けることが大切です。
かんしゃくが起きやすいタイミング
子どもの脳は、疲れや空腹、刺激の多さにも大きく影響を受けます。特に次のような状況では、前頭葉の働きが低下し、感情をコントロールしにくくなります。
- 睡眠不足
- 空腹
- 長時間遊んで疲れている
- 環境の変化
- 人が多く刺激が強い場所
- 我慢が続いている
大人でも疲れるとイライラしやすくなるように、子どもも同じです。むしろ、脳が未熟なぶん、影響を受けやすいと言えるでしょう。
かんしゃくを起こしたときの対応方法
かんしゃくを起こしたときの対応方法は、4つあります。
- まず安全を確保する
- 落ち着くまで待つ
- 気持ちを代弁する
- 落ち着いてから一緒に考える
① まず安全を確保する
かんしゃくを起こしているときは、自分の体を思うようにコントロールできず、手足を振り回したり、床に寝転んだり、物を投げたりすることがあります。
そのため、まずは子ども自身や周囲の人がけがをしないよう、安全を確保することが最優先です。
危険な物は手の届かない場所へ移動し、硬い家具の角や割れ物が近くにある場合は距離をとりましょう。
大人が慌てたり大声を出したりすると、子どもは「もっと危険な状況なんだ」と感じ、さらに興奮してしまうことがあります。
まずは落ち着いた表情と穏やかな声でそばにいることが、子どもに安心感を与えます。
② 落ち着くまで待つ
かんしゃくの最中は、脳が強い興奮状態にあります。
この状態では、
- 「どうして怒っているの?」
- 「泣かないの!」
- 「いい加減にしなさい!」
と話しかけても、その言葉を理解したり、自分の行動を振り返ったりすることはほとんどできません。
これは、感情をコントロールする前頭前野よりも、危険を察知する扁桃体の働きが優位になっているためです。無理に説得したり叱ったりすると、子どもはさらに不安や怒りを感じ、かんしゃくが長引いてしまうこともあります。
まずは「今は落ち着く時間」と考え、子どもの気持ちが静まるまでそばで見守りましょう。
無理に泣き止ませる必要はありません。安心できる大人がそばにいることが、脳を落ち着かせる助けになります。
③ 気持ちを代弁する
子どもが少し落ち着いてきたら、気持ちを言葉にしてあげましょう。
例えば、
- 「悔しかったんだね。」
- 「もっと遊びたかったんだね。」
- 「悲しかったね。」
- 「びっくりしたね。」
など、子どもの気持ちを代弁します。
この関わりは「感情のラベリング」と呼ばれています。
自分ではまだ説明できない気持ちを大人が言葉にしてくれることで、子どもは
- 「今の気持ちは悔しかったんだ」
- 「悲しかったんだ」
と少しずつ理解できるようになります。
脳科学では、感情を言葉にすることは前頭前野の働きを助け、興奮した扁桃体を落ち着かせることが分かっています。
この経験を何度も積み重ねることで、子どもは次第に泣く前に、
- 「いやだった。」
- 「貸してほしかった。」
- 「自分でやりたかった。」
など、言葉で気持ちを伝えられるようになっていきます。
④ 落ち着いてから一緒に考える
子どもが完全に落ち着いてから、一緒に出来事を振り返りましょう。
例えば、
- 「何が嫌だったのかな?」
- 「どうしてほしかった?」
- 「次はどうしたらよかったかな?」
- 「困ったときは何て言えば伝わるかな?」
と、子ども自身が考えられるように問いかけます。
この時間は、叱るためではなく、「次はどうすればいいか」を一緒に学ぶ時間です。
感情が落ち着いた状態では前頭前野が働きやすくなり、自分の気持ちを整理したり、相手の立場を考えたり、次の行動を選んだりする力が育ちます。
何度もこの経験を積み重ねることで、子どもは少しずつ感情をコントロールする力や問題を解決する力を身につけていきます。
かんしゃくは、その場で叱って止めるものではなく、「安心する」「気持ちを知る」「考える」という経験を積み重ねながら、少しずつ減っていくものなのです。
【年齢別】かんしゃくを起こしたときの対応方法
年齢別に脳の発達に合わせたかんしゃくを起こしたときの対応方法について解説していきます。
0〜1歳
特徴
0〜1歳の赤ちゃんは、泣くことが唯一のコミュニケーション手段です。
「眠い」「お腹が空いた」「暑い・寒い」「抱っこしてほしい」など、自分の不快感や要求を言葉で伝えることができないため、泣くことで周囲に知らせます。
また、この時期は感情をコントロールする前頭葉がまだほとんど発達していません。そのため、「少し我慢しよう」「気持ちを切り替えよう」と考えることはできず、不快な気持ちになると泣くことが自然な反応です。
泣くことはわがままではなく、「助けて」「気づいて」という大切なサインなのです。
対応方法
✅ まず原因を探す
赤ちゃんが泣くときは、まず不快の原因を確認しましょう。
- お腹は空いていないか
- 眠くないか
- おむつは汚れていないか
- 暑すぎたり寒すぎたりしないか
- 体調は悪くないか
原因がわからないこともありますが、一つずつ確認することで安心につながります。
✅ 安心させる
抱っこをしたり、優しく話しかけたり、ゆっくり背中をさすったりすることで、赤ちゃんは「大丈夫なんだ」と感じられます。
このような安心できる関わりは、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を抑え、自律神経を整えます。安心を繰り返し経験することで、「困ったときには助けてもらえる」という信頼感(愛着)が育ち、心の土台づくりにもつながります。
1〜2歳
特徴
この時期は、「自分でやりたい」という自立心が急速に育ち始めます。
靴を自分で履きたい、服を自分で着たい、ボタンを押したいなど、「自分で挑戦したい」という気持ちは強くなります。
しかし一方で、思うように体が動かなかったり、うまくできなかったりすることも多くあります。
さらに、
- 気持ちを言葉で十分に伝えられない
- 我慢する力がまだ未熟
- 気持ちを切り替えることが苦手
という発達段階のため、思いどおりにならないと感情が一気にあふれ、かんしゃくにつながりやすくなります。
これは前頭前野がまだ十分に発達しておらず、感情をコントロールする力が未熟だからです。
対応方法
✅ まず安全を確保する
床に寝転んだり、頭を打ちつけたり、物を投げたりすることもあるため、まずは危険な物を遠ざけ、安全な場所で見守りましょう。
無理に押さえつけるのではなく、優しく危険を防ぐことが大切です。
✅ 落ち着くまで待つ
かんしゃくの最中は、脳の警報装置である扁桃体が強く働いています。
この状態では、
- 「泣かないの!」
- 「ちゃんとお話しして!」
と言っても、子どもの脳にはほとんど届きません。
まずは安心できる距離で見守り、興奮が落ち着くのを待ちましょう。
✅ 気持ちを代弁する
少し落ち着いてきたら、
- 「悔しかったね。」
- 「自分でやりたかったんだね。」
- 「嫌だったんだね。」
と気持ちを言葉にしてあげます。
子どもは「分かってもらえた」という安心感を得られ、自分の感情を理解する力も少しずつ育っていきます。
3〜4歳
特徴
言葉が増え、会話も上手になりますが、まだ自分の気持ちを正確に表現することは難しい時期です。
特に、
- 悔しい
- 恥ずかしい
- 不安
- 悲しい
- 疲れた
などの複雑な感情は、自分でもうまく理解できません。
また、保育園や幼稚園では我慢する場面も増え、疲れやストレスがたまることで、家に帰って安心した途端に感情が爆発することもよくあります。
対応方法
✅ 感情に名前をつける
- 「悲しかったんだね。」
- 「悔しかったね。」
- 「びっくりしたね。」
- 「思いどおりにならなくて嫌だったね。」
など、子どもの気持ちを言葉にしてあげましょう。
感情を言葉で表現する経験を積み重ねることで、「怒る」以外の方法で気持ちを伝える力が育っていきます。
✅ 選択肢を与える
興奮が落ち着いてきたら、
- 「抱っこする?」
- 「お水を飲む?」
- 「少し座って休む?」
など、自分で選べるように声をかけます。
「自分で決められた」という感覚は安心感につながり、気持ちを切り替えやすくなります。
5〜6歳
特徴
この頃になると、前頭前野が少しずつ発達し、我慢したり順番を待ったりする力が育ってきます。
しかし、まだ大人ほど感情をコントロールできるわけではありません。
特に、
- 疲れている
- 空腹
- 睡眠不足
- 緊張している
- 頑張りすぎている
といった状態では、感情をコントロールする力が弱まり、些細なことでもかんしゃくにつながることがあります。
対応方法
✅ 理由を一緒に振り返る
落ち着いてから、
- 「何が一番嫌だった?」
- 「本当はどうしてほしかった?」
と、出来事を一緒に振り返ります。
怒っている最中ではなく、落ち着いてから話すことで、自分の気持ちを整理する力が育ちます。
✅ 解決方法も一緒に考える
- 「次はどうしたら伝えられるかな?」
- 「困ったら先生やおうちの人に何て言おうか?」
と、次の行動を一緒に考えます。
失敗を責めるのではなく、「次につながる経験」として受け止めることが大切です。
小学生(6〜12歳)
特徴
小学生になると、感情をコントロールする力はさらに育ってきます。
しかし、学校では友達との関係や勉強、集団生活などで多くのストレスを抱えています。
学校で頑張って我慢している分、家という安心できる場所で感情があふれ、かんしゃくや反抗的な態度として表れることも少なくありません。
「家でだけ怒る」という場合も、安心できる場所だからこそ気持ちを出せている可能性があります。
対応方法
✅ 否定せず話を聞く
- 「そんなことで怒るなんて。」
- 「気にしすぎだよ。」
と否定するのではなく、
- 「嫌だったんだね。」
- 「それは悔しかったね。」
と、まず気持ちを受け止めましょう。
子どもは「分かってもらえた」と感じることで、安心して自分の気持ちを話せるようになります。
✅ 気持ちを整理する練習をする
怒りの奥には、
- 悲しかった
- 悔しかった
- 不安だった
- 寂しかった
- 恥ずかしかった
など、さまざまな感情が隠れています。
- 「怒る前はどんな気持ちだったかな?」
- 「本当は何が一番つらかった?」
と一緒に考えることで、自分の感情を理解し、言葉で表現する力が育ちます。
この積み重ねが、自分で気持ちを整理し、感情をコントロールする力につながっていきます。
まとめ
子どものかんしゃくは、親を困らせるための行動ではありません。脳がまだ発達の途中であり、感情を整理したくても、その方法がわからないために起こる自然な反応です。
特に幼い子どもは、感情を感じる扁桃体は活発でも、それを調整する前頭葉はまだ十分に育っていません。
だからこそ、大人が落ち着いて寄り添い、子どもの気持ちを受け止めることが、感情をコントロールする力を育てる第一歩になります。
かんしゃくは「困った行動」と捉えるのではなく、「助けて」「わかってほしい」という心からのメッセージです。
そのサインに耳を傾けることが、子どもの安心感を育み、やがて自分の感情を上手に扱える力へとつながっていくでしょう。
| 🌿ことのはうさぎの ひとこと🌿 「かんしゃくは、困らせたいからじゃないんだ。まだ言葉にできない気持ちが、『気づいて』って一生懸命伝えているんだよ。泣き止ませることだけが子育てじゃない。泣いても安心できる場所でいてあげよう」 |

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