2024年1年間で産まれた日本人の子どもの数は68万6061人。統計を取り始めた1899年以降70万人を下回ったと厚生労働省の調査で分かり、このままでは日本の未来が危うくなると多くの専門家が警鐘を鳴らしています。
今回ご紹介する4カ国はかつて少子化が危機的状況に陥りましたが、今ではその危機を乗り越えて世界でも成功していると評価されている国々です。それぞれの国が成功に至った主な成果と対策についてご紹介しようと思います。
少子化の成功事例4カ国
少子化の成功事例を4カ国ご紹介します。
- フランス
- スウェーデン
- ドイツ
- フィンランド
1. フランス:出生率V字回復の「家族政策先進国」
◎ 主な成果
- 2000年代に合計特殊出生率が2.0前後まで回復(近年はやや低下)
- EU諸国の中でも高い水準を維持
◎ 主な対策
- 家族手当の充実
→ 子どもが多い家庭ほど手厚い給付が受けられる。所得制限なしで普遍的に支給。 - 保育施設の拡充
→ 0歳から利用できる保育施設「クレッシュ」の整備が進んでいる。 - 仕事と家庭の両立支援
→ 共働き家庭を前提にした政策設計。柔軟な育児休業制度や在宅勤務支援も導入。 - 学校教育の無償化
→ 幼児教育(3歳〜)から大学まで公教育は基本的に無償。教育費の負担が少ない。 - 父親の育児参加の推進
→ 男性の育児休暇取得率も高く、育児は「夫婦の協働」が文化として定着。
2.スウェーデン:世界トップクラスのジェンダー平等と育児支援
◎ 主な成果
- 出生率は一時1.2台まで落ち込んだが、1.9前後に回復
- 社会の「子育てしやすさ」が世界的に評価されている
◎ 主な対策
- 育児休業制度の充実
→ 最大480日間の育児休業を、両親で分け合って取得する制度(うち90日は父親のみに付与)。取得率も非常に高い。 - 男女平等の徹底
→ 家事・育児は男女平等に行うという文化が強く、制度面でも支援されている。 - 保育園の低料金・高品質
→ 子ども一人あたりの保育料に上限があり、収入に応じた負担。保育の質も非常に高いとされている。 - 柔軟な働き方
→ ワークライフバランスを大切にする職場文化が根づいており、短時間勤務や在宅勤務も一般的。 - 子育て支援と教育の国家責任
→ 子育ては個人や家庭の責任ではなく、「社会全体の責任」という考え方が徹底している。
3.ドイツ:女性の就労支援と家族政策で持ち直し
◎ 状況と成果
- 1990年代には出生率が1.2台まで落ち込んだが、近年は1.5〜1.6程度まで回復
- 特に旧西ドイツ地域での出生率上昇が顕著
◎ 主な対策
- 両親手当(Elterngeld)制度
→ 出産後の育児休業期間に、最大14か月間まで給与の約67%が支給される(両親で分け合うことが条件) - 保育制度の拡充
→ 1歳以上の子どもには保育園入園の「法的権利」が保障されている(待機児童対策) - 女性の職場復帰支援
→ 時短勤務制度や在宅勤務制度の普及。キャリアと育児の両立支援が進んでいる。 - 男女平等の推進
→ 政府も「育児は母親だけのものではない」と明確にメッセージを出し、父親の育休取得を促進。
4.フィンランド:包括的な福祉国家モデル
◎ 状況と成果
- 以前は2.0近い出生率だったが、近年は1.3台まで低下
- ただし、支援制度の質は高く、子育てしやすさでは世界でも高評価
◎ 主な対策
- ベビーボックス制度
→ 国から全ての妊婦に「出産準備キット(服、おむつ、育児用品)」が無償提供される。育児への安心感を与える象徴的制度。 - 教育・医療の完全無償化
→ 大学まで無償。育児と教育にかかるお金の心配が非常に少ない。 - 男女平等と柔軟な育休制度
→ 父親にも育児休暇が保障され、家庭内での育児分担が一般的。 - 子どもにやさしい社会環境
→ 公園や交通機関、公共施設など、子連れでも快適に過ごせる設計がされている。
しかし、フィンランドは制度は充実しているものの、「若者の価値観の変化(結婚・出産への意欲低下)」が今後の課題となっています。
まとめ
少子化の成功している4カ国が共通しているのは、
- 金銭的支援の手厚さ
- 保育・教育の充実
- 男女共同参画の推進
- 社会全体で子育てを支える文化の醸成
日本では少子化対策が「一時的な給付」や「キャンペーン的な施策」にとどまることが多く、制度の一貫性や長期的ビジョンが弱い点が課題です。
少子化は単に「お金の問題」ではなく、「子どもを持ちたいと思える社会」かどうかが大きな鍵です。家族をつくるということは大変なことではなく、楽しいことだという雰囲気を社会全体でつくることがとても大事です。今、日本も子育てを人生の自然な選択として支えられる社会づくりが求められているでしょう。
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