赤ちゃんがハイハイをするとき、右手と左足、左手と右足を交互に動かしますよね?
この動きは、左右の脳を交互に働かせる運動になっています。
その結果、左右の脳をつなぐ「脳梁(のうりょう)」をたくさん使うことになり、脳梁の発達をうながすと言われているのです。
この記事では、「脳梁とは何か?」から、「脳梁の異常で起こる症状や病気」「MRIでの検査」まで、わかりやすく解説します。
脳梁(のうりょう)とは?
脳梁(のうりょう/英語:Corpus Callosum)とは、右脳と左脳をつなぐ神経線維の束のことです。幅約1cm、長さは約10cmほどあり、約2億本以上の神経繊維でできています。
左右の大脳半球を連絡する「情報の橋渡し役」であり、人間の思考・運動・感情のバランスを保つために非常に重要な構造です。
脳梁の主な役割
機能 | 内容 |
---|---|
情報伝達 | 右脳と左脳の間で情報(視覚・運動・言語など)をやりとりする |
協調運動 | 両手・両足を同時に動かすような動作を円滑に行う |
認知統合 | 左脳の論理的思考と、右脳の直感的処理を統合し、バランスのとれた認知を支える |
脳梁の発達
脳梁は、胎児の妊娠12週ごろから形成が始まり、20週ごろに完成するとされています。
この時期に何らかの異常が起きると、「脳梁欠損症」や「脳梁形成不全」といった先天性の異常が起こることがあります。
脳梁に関連する病気や障害
1. 脳梁欠損症(Corpus Callosum Agenesis)
**脳梁欠損症(Corpus Callosum Agenesis)**は、脳梁が生まれつき部分的または全体的に存在しない状態です。
このような脳梁の発達異常は、以下のような症状を引き起こすことがあります:
- 発達の遅れ(知的・言語・運動)
- 行動の偏り(自閉スペクトラム傾向)
- てんかん発作(30〜60%の頻度で合併)
2. 脳梁離断術(外科手術)
- 発作が左右両側に広がるのを防ぐ目的で、脳梁の一部または全部を切断する手術
- 特に、転倒発作や重度のミオクロニー発作など、薬でコントロールが難しい小児てんかんに対して検討されます
ポイント
- 発作の頻度や強さが軽減する例も多い
- 一部に「分離脳症候群」などの後遺症が出ることもある(特に大人の場合)
3. 高次脳機能障害
- 脳梁が損傷すると、左右の脳での情報共有がうまくいかなくなり、記憶や注意、運動の調整に影響が出ることもあります
脳梁を調べるには?
脳梁の異常は、画像検査(MRIやCT)で調べることができます。特に発達の遅れやてんかんなどの症状がある場合、小児神経科や脳神経外科での診察と検査が勧められます。
脳梁に問題があるとどうなるの?
脳梁に異常があると、以下のような症状がみられることがあります:
- 両手や両足を同時に使うのが苦手(協調運動障害)
- 学習や記憶がうまくいかない(認知機能の低下)
- 発作(てんかん)を起こすことがある
- 注意力が散漫になる
- 感情のコントロールが難しい
ただし、軽度の脳梁異常では無症状の場合もあり、MRIで偶然見つかることもあります。
まとめ:脳梁とは?
項目 | 内容 |
---|---|
脳梁とは | 左右の脳をつなぐ神経線維の束 |
役割 | 情報伝達、運動の協調、認知の統合 |
異常があると | てんかん、発達の遅れ、行動面の課題が出ることも |
調べるには | MRI・CTなどの画像検査が有効 |
脳梁の異常があっても、すぐに「重い障害がある」とは限りません。
脳はとても柔軟(可塑性がある)なので、早期の療育や支援により、多くの子が成長していけます。
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