「たった数時間で命を落とすこともある」――
そう言われるのが、劇症型溶連菌感染症(STSS=Streptococcal Toxic Shock Syndrome)です。
この病気は非常にまれですが、進行が早く、死亡率も高いため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。
この記事では、劇症型溶連菌感染症の特徴・症状・原因・治療・予防法について、わかりやすく解説します。
劇症型溶連菌感染症とは?
劇症型溶連菌感染症は、「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」という細菌が血液中や筋肉・臓器に広がることで、急激に全身状態が悪化する病気です。
この病気は「劇症型(げきしょうがた)」という名前のとおり、急速に進行して命を脅かすことがある重篤な感染症です。
通常の「溶連菌感染症」との違い
比較項目 | 通常の溶連菌感染症 | 劇症型溶連菌感染症 |
---|---|---|
主な症状 | のどの痛み、発熱 | 急激な痛み、腫れ、ショック症状 |
進行 | 比較的ゆるやか | 数時間〜1日で命に関わることも |
治療 | 抗生物質で改善 | 抗菌薬+集中治療が必要 |
死亡率 | ほぼなし | 約30%(※場合による) |
劇症型溶連菌感染症の主な症状
初期症状(風邪や筋肉痛に似ていて見逃されやすい):
- 手足の激しい痛み(見た目に異常がなくても)
- 発熱、悪寒
- 倦怠感、吐き気
数時間〜数十時間後には:
- 腫れや皮膚の変色(赤紫色、紫斑など)
- 意識障害
- 呼吸困難
- 急激な血圧低下(ショック症状)
- 多臓器不全(腎不全・肝障害など)
※「ちょっと痛い」→「どんどん痛くて腫れてくる」→「意識がもうろうとする」
というように、数時間で重症化するのが大きな特徴です。
原因となる菌:A群溶血性レンサ球菌(GAS)
A群溶連菌は、もともと**子どもの「溶連菌性咽頭炎」や「猩紅熱(しょうこうねつ)」**の原因として知られている細菌です。
ですが、まれに体内で異常に増殖し、毒素を出して全身に回ると、このような劇症型になります。
感染経路:
- 傷口からの侵入(切り傷・虫刺され・水虫など)
- のど・皮膚から体内への侵入
- 接触感染・飛沫感染(※日常的な感染もあるが、劇症化は稀)
劇症型溶連菌感染症にかかりやすい人は?
- 高齢者
- 糖尿病・心疾患などの持病がある人
- ステロイドなど免疫を抑える治療を受けている人
- 最近手術や外傷があった人
※ただし、健康な若年者でも発症することがあるため油断は禁物です。
劇症型溶連菌感染症の治療法
1. 早期の抗菌薬投与
- ペニシリン系・クリンダマイシンなどの静脈注射による大量投与
2. 集中治療室(ICU)での全身管理
- 血圧維持(昇圧剤)、人工呼吸器、透析などが必要なことも
3. 感染部位の外科的切除
- 壊死(えし)がある場合は**切除手術(最悪の場合は手足の切断)**が必要になることも
劇症型溶連菌感染症の予防法はあるの?
完全な予防は難しいですが、以下の点に注意しましょう:
- 傷口は清潔に保ち、消毒・洗浄をしっかり
- 手洗い・うがいを徹底
- のどの痛みや発熱が長引くときは受診
- 「筋肉痛と思ったら異様に痛い」「腫れがある」場合はすぐ病院へ
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | A群溶血性レンサ球菌 |
主な症状 | 激しい痛み・腫れ・発熱・意識障害など |
進行 | 数時間〜1日で重症化 |
治療 | 抗菌薬+集中治療+手術の可能性も |
予防 | 傷口の清潔管理・早期受診が大切 |
「ただの風邪?」「筋肉痛?」と思っても、痛みや症状が急に悪化したらすぐに病院へ!
命を守るためには、「おかしいな」と思った時点での行動がとても大切です。
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